日本でいう東洋医学とは、ほとんど中医学のことを言います。中医学における肝と西洋医学における肝臓とは違います。肝は疏泄と蔵血を主ります。ここでは疏泄・蔵血それぞれの機能をみていきます。
目次
疏泄作用がある
疏は疎通
泄は発散・昇発を意味します。
代表的なものを挙げると気・血・津液を巡らせる働きがあります。
肝の疏泄機能の障害は他の、心、脾、肺、腎に及び全身に及びます。病症から脾胃が原因だと考えていたものが、実は最初は肝が原因だったということもあります。基本的な知識が正確な証をたてるうえで最も重要となります。
気・血・津液の代謝を促進する
気・血・津液を上向き外向きに巡らせる働きがあります。
肝の特徴は上へ上へです。
疏泄機能に異常があると血行障害が生じ血瘀が生じます。血瘀は西洋医学でいう血栓のようなものと考えればいいでしょう。
情志を調節する
情志は五行学説のところでの五志で肝の疏泄機能と密接な関係があるとされています。
木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
---|---|---|---|---|
肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
怒 | 喜 | 思 | 悲 | 恐 |
肝の疏泄機能が滞ると抑うつ状態になりやすくなります。ほかには胸肋部のはりや違和感、腹部の張りや全身の倦怠感、気分が滅入ったり、怒りっぽくなったりため息をつくようになります。ため息は滞ってる気を流す役割があるので、体が自然にそれを知っていて気を流そうとしているために起こる現象です。
精液や月経に及ぼす影響
肝は精液の排泄や月経発来の促進に関係しています。
生殖器に関する働きは腎だけではなく肝も関係しています。
男子の精液の貯蔵は腎、排出は肝。
女子の排卵や月経の発来も肝の影響をうけます。
これらもすべて疏泄機能によるものです。
疏泄機能に異常があると、女性では生理不順・月経痛・閉経などがみられます。
脾の運化機能を促進する
肝の疏泄機能は脾胃の機能を促進します。
脾は昇清を主り、胃は降濁を主っています。これらの機能と疏泄機能は深くかかわっていて、食べ物を消化吸収するのを促進します。
疏泄機能に障害が起きるとこれらの脾胃の機能も障害されゲップ、嘔吐、下痢、などの症状が現れます。
胆汁の分泌・排出を調整する
肝と胆は表裏一体となっていて疏泄機能が正常であれば、胆汁も正常に分泌・排出されます。
胆汁は胆汁酸と胆汁色素からなっていて、胆汁酸は小腸からの脂肪の消化吸収を助ける役割があります。
ちなみに胆汁色素がうんこの色を作ります。もともと黄色をしていますが、食べ物やそれを分解する菌などの影響もうけあの色になります。
蔵血機能がある
蔵血機能とは血液を貯蔵し、血量を調整する働きのことをいいます。
目に開竅する
目を酷使すると肝血を大量に使います。視力は肝血からの栄養の供給に依存しているため、肝は「目に開竅する」といわれています。
肝と目は密接な関係にあるため、肝の異常は目に表れやすいといわれています。
肝血が不足すると目の渇きを起こしたり夜盲になります。
長くものを見ることによって目が疲れたり、病後や産後の虚血によって経脈が滞り、気血の流れも滞り肩が凝るといった症状が出ることもあります。
肝血虚による病態
出血や、栄養失調、慢性疾患による血の消耗、脾胃虚弱による血の生成不足など、あるいはその他の原因によって血量が少なくなる状態を肝血虚(かんけっきょ)といいます。これは肝血が不足する状態です。
肝血虚になれば栄養不足になり目のかすみ、爪のひび割れ、手足のしびれや筋の痙攣、女性の場合月経の遅れや過少などの症状が出ます。
この病態がひどくなると五臓に及びます。
心に及べば不眠、めまい、動機、健忘(物忘れ)
腎に及ぶと耳鳴りや頭痛、腰痛や下肢のだるさといった症状が出ます。
肝の働きのまとめ
肝は疏泄を主り、蔵血を主ります。
疏泄機能とは腎と脾からの生命エネルギーを体全体にいきわたらせる働きのこと。
イメージは上へ上へ。外へ外へ。
蔵血機能とは血液を貯蔵し、血量を調節する。