捻挫は温めた方がいいのか冷やしたらいいのかということについて。
結論は、場合によって違います。分からない場合は冷やすのが無難です。冷やす場合は確実に治癒までの時間が長くなりますが、それが必要な時もあります。これは人間の体の仕組みを理解することで簡単に判断することができます。
目次
捻挫とは
関節を構成している関節包や靭帯の損傷をいいます。靭帯は骨と骨をつなぎ関節の可動域を制限する働きがあり、それによって関節を安定させ、守る役割を果たしています。
足をくじいたりした拍子に、関節の可動域以上の動きを強制されたときに、関節包や靭帯に損傷が起こります。これが捻挫といわれるものです。
組織が損傷されると、それを修復するためプロスタグランジンの分泌が増え血液循環が良くなり、それに伴い痛みや、炎症が起こります。
RICE処置
RICE処置とは応急処置のことを言います。
Rest安静
Iceアイシング
Compression圧迫
Elevation挙上
この頭文字をとってRICE処置といいます。
通常捻挫をした直後の急性期は冷やすと良いといわれていますし、私もそう習いました。しかしそれは一般的なことで、どれくらいの損傷かによっても変わってきます。患部にかかった負荷は足であれば体重によっても変わってきますし、その時の動作にもよります。
軽度であれば冷やすことはむしろ治癒期間を伸ばすだけで良くありません。もともと炎症が起こるのは修復している証拠で、痛みが出るのも悪いところを知らせてくれているため有難い事なのです。
もし痛みがなければ、捻挫した瞬間に気づかずもっと重症になっていたかもわかりません。無痛症という痛みの感じない病気がありますが、痛みは身の危険を察知する能力です。これがないと、知らない間にけがをしていたり、骨折していたりします。その結果感染症にもかかりやすく早死にする言われています。
何が言いたいかというと人間に起こる症状というのは必要だから起こっているのです。痛みもそうですし、炎症もそうです。それを冷やすということは本来の道理から外れています。
しかし、冷やさないといけない時もあります。重度の捻挫の場合当然出血、腫脹、痛みなどが軽度の時よりもひどくなります。それは損傷具合がひどいことを表しています。人間の体は時として、行き過ぎた反応をする時があります。炎症によって他の組織まで損傷が波及したり、腫れによって組織が圧迫され損傷することも考えられます。その場合はやむを得ず冷やすことをしなければいけません。
高血圧に学ぶ
例えば高血圧を例にするとわかりやすいと思います。血圧が上がるということは必要だから上がっているのです。人の血管は生まれたときから動脈硬化が始まっていて、生活習慣・食習慣により、それが加速していきます。年を重ねれば血管の弾性力は失われ、全身に血液を運ぶには心臓の伸縮のみに頼らざるを得なくなります。その結果血圧が上がります。
そんな時降圧剤で血圧を下げればどうでしょうか。緊急の場合は必要なことですが、それが慢性的に続けばどうなるか。必要なところに血液がいきわたらなくなり、当然何かしらの障害をもたらします。
では、体が必要だからと言って、上が200とか220とかになっているのに、薬で下げずにそのまましていたらどうなるでしょうか。血管がその圧力に耐えられず、破れて出血してしまいます。動脈硬化が進んでいる人であれば、更に破れやすくなっています。脳で出血すれば脳出血となり、命にかかわります。そうならないように一時的に薬で押さえることをしなければいけません。
これと同じように捻挫の炎症を抑える意味での冷却は一時的なもので、落ち着けば冷やすことはむしろ逆効果になります。冷やすという行為は、それ以上悪くならないためするもので、治すために冷やすという考え方ではありません。治すには温めて、血液の循環を良くしなければいけません。
「冷やせば治りが早くなる」という表現は間違いで、「冷やせばそれ以上の損傷を防ぐ」という言い方が正しいと思います。そして冷やせば当然その反動で熱を持ちやすくなります。それよりもひどい炎症でなければ冷やす意味はないということになり、軽度で軽く捻っただけでは冷やすことはしなくていいということになります。当然普通の生活をして風呂にも入ってもかまいません。
野球に学ぶ
私は学生の頃野球をやっていました。小学生からやり始めて、中学ではピッチャーをやっていました。硬式球を使うリトルリーグでは球数制限があり、きちんと管理されています。
中学三年の頃、練習中に肘に違和感があり、その後投球できなくなりました。その時に初めて冷やすことを知りました。それまでも知識として知っていたのですが、体で体験することになりました。年齢を重ねるにつれ筋力が増し球速も上がっていきます。それと同時に関節や筋肉の負担も大きなものになっていきます。
軽度の場合は冷やすことは逆効果となりますが、負担がおおきくなれば冷やしてそれ以上の損傷をさせないようにしなければいけません。関節に負担のかからない投球フォームもそうですが、正しい投げ方をしていたとしても負荷が集中して、それの修復作業で炎症が起こります。
私はこうした実体験からも冷やすことの大切さを感じています。一方で冷やすことと治ることは別のものであるということは理解しておく必要があります。一般での日常生活においては冷やすという行為に及ぶ損傷というのはよっぽどのことです。むしろ温めて血液循環を良くしてやることが治癒においては重要となります。
軽度か重症かという判断は難しいと思います。発生直後明らかに膨れ上がっているとかであれば、冷やすと判断できますが、どこで判断すればいいのかという疑問を持つこともあると思います。
その時は冷やすと気持ちが良ければ冷やします。結局これが一番わかりやすい判断材料です。症状が軽いときに冷やすと何か違和感があります。ですので普段から自分の体の声を聴くように習慣づけることが大切であると言えます。それは今回挙げた「捻挫」だけにとどまらず、いたるところで自分の体を守ってくれることに繋がります。