血液検査でコレステロールの数値を注目されている人も多いと思います。酸化したコレステロールが血中に過剰に存在すると動脈硬化を促進させたり脳梗塞や心筋梗塞などの生活習慣病の原因となります。
厚生労働省平成29年患者調査の概況、(表7主な傷病の総患者数)から脂質異常症の患者数は220万5000人にのぼっています。糖尿病患者が328万9000人ということをみても決して少ない数字ではないということがお分かりいただけると思います。しかしこの数値は日本の基準が厳しいために生じいます。その話はまた後日にします。
このページではまずコレステロールとはいったい何なのかを見ていきたいと思います。
目次
コレステロールとは
コレステロールは脂質の一種で体を維持するのに必要不可欠な物質であり、細胞膜・ホルモン・胆汁酸の材料になります。
約100~150g存在し、脳に25%筋肉に25%血液に10%残りは皮膚・内臓・組織などに含まれています。
コレステロールが少ないとこれらの器官に十分な量がいきわたらないため、それぞれの器官で支障をきたします。通常人が1日に必要なコレステロールの約70%は肝臓で作られますので、コレステロールが少ない方は、肝機能低下などの疾患が疑われます。
逆にコレステロールが多いとさまざまな病気の原因になります
動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞・胆石・膵炎など
次はリポタンパクのことについて見ていきます。
リポタンパクの種類
リポタンパクによってコレステロールを全身に運びます。
コレステロール(脂)は通常血液(水)には溶けませんが、リポタンパクという物質になることによって血液中を移動することができます。これによって全身に運ぶことができるわけです。
コレステロールを包み込み血液に混ざりやすくするために使われるたんぱく質をアポタンパク質といいます。
リポタンパクは、血液中に含まれるりん脂質・中性脂肪・コレステロールとアポタンパク(水溶性)でつくられます。
リポタンパクはカイロミクロン・VLDL・IDL・LDL・HDLがあります。
コレステロール・中性脂肪・リン脂質などの脂質の割合が多ければ低比重になり、大きさも大きくなります。
①カイロミクロン
ほとんど中性脂肪からなります。消化された食べ物が小さな分子に分解され小腸に届きます。小腸では脂質(主に中性脂肪)がコレステロールと結びついてカイロミクロンと呼ばれるリポタンパクになります。
このカイロミクロンは腸の内側を覆う細胞を抜けて血液に入り各臓器へ運搬(主に中性脂肪)されます。このため食後数時間は血清脂質(血液中に存在する脂質)が上昇します。
残骸は肝臓まで戻りろ過されて構成分子が再利用されます。
カイロミクロンが一番大きい粒をしています。ここから順番に中性脂肪・リン脂質・コレステロールを各組織に運搬し大きさも小さくなっていきます。そして比重は高くなっていきます。
②VLDL(低比重リポタンパク)
中性脂肪が半分以上で構成されています。
肝臓では中性脂肪分子に変換してコレステロールとアポタンパクとともに低比重のリポタンパクに合成します。このリポタンパクをVLDLといいます。
VLDLは血液に乗って全身の抹消組織まで合成された脂質を運びます。
③IDL(中間比重リポタンパク)
VLDLが抹消組織に中性脂肪を運ぶ途中、中性脂肪を分解し筋肉や脂肪細胞内に運ばれます。その時に分解速度が遅くなった場合にできるリポタンパクがIDLです。
中性脂肪を筋肉などの組織に渡してVLDLの時よりも中性脂肪を減らします。これはLDLの一歩手前の状態です。
④LDL(低比重リポタンパク)
コレステロールが半分を占めます。
血液中でLDLとなったリポタンパクは全身にコレステロールを運びます。
中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪のように貯蔵できますが、コレステロールは貯蔵できません。
細胞で使わずにいると血液中や動脈壁にたまってしまいます。これが動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病の原因になります。
⑤HDL(高比重リポタンパク)
リン脂質が約半分を占めます。
HDLは肝臓や小腸血液中で合成されて、血液中の余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻します。
昔は、LDLは悪玉コレステロールHDLは善玉コレステロールと呼ばれていました。
まとめ
コレステロールは脂質で水(血液)には溶けずそのままでは全身にコレステロールを運搬できません。
リン脂質(両親媒性分子)とアポタンパク(水溶性)の中にいれてもらうことで、コレステロールを全身に運ぶことができます。これらのパッケージ全体をリポタンパクといいます。
コレステロール自体に種類はなく、リポタンパクに含まれる脂質やタンパク質の比率で種類がわけられて働きも変わります。